2006年よりジャパンコンサルティングオフィス(JCO)は、日系企業の日本人駐在員と海外現地スタッフの相互理解の質を高める活動をアクティブに行っています。
欧州や米国で、日系企業数100社のスタッフをトレーニングしてきた経緯を持つJCOのトレーナー達は、文化的な境界を越えて働く人々が立ち向かわなければならない共通の難しさを痛感しています。伝統的な企業であっても、先進的な企業であっても、難しさの質に大きな違いはありません。
今日のニュースレターでは、ローカルスタッフにとって重要なキーワードの1つであるHidden Agenda –「隠された意図(または計画)」についてご紹介します。
「隠された意図」は、海外拠点における日系企業の仕事やビジネスに直接影響を及ぼす決定や戦略についての透明性の欠如が頻繁に発生する事を指しています。
JCO創業者も欧州で日系企業に勤めていた頃、良好な人間関係が構築できているにもかかわらず、現地スタッフが日本人駐在員が「何を思い、行動しているのか」を、常に推測する場面が多くあったと言っています。
欧州の日系企業に勤める中間管理職のフィリップ氏はこのように語っています。「私はこの会社に5年間勤務し、日本人の同僚と良好な関係を築いています。私は現地市場を熟知しているので、会社の方向性について明確な考えを持っています。日本人の同僚とはこの点についてよくディスカッションし、彼らは私の意見に理解を示してくれているのですが、駐在員同士や本社との議論後、私の提案はほとんど採用されることがなく、ただ考慮されるだけとなることを何度も経験しました。特にもどかしく感じるのは、すべてが決定され変更するには遅すぎる段階になるまで、私の耳には決定事項が入ってこないことです。
私も他の現地スタッフも、日本人駐在員が”密かに遂行される隠された計画、または意図” を持っていることを確信しています。」
しかしJCO創業者が日本人駐在員の皆様に聞いてみたところ、一様にしてそのような「隠された意図」は存在しないという答えでした。(質問内容に驚いていたので本心だと思います)
このようなことが起こる理由を駐在員の方々は次のように説明してくれました。
「本社の運営方針や計画があるため、現地からの提案がスピーディーに採用されることは難しい場合が多いのです」
たとえ勘違いや誤解がベースになっていたとしても、私生活と同様、職場での感情も重要です。ローカルスタッフが、自分たちのアイデアや提案が長期間通らないのは「隠された計画や意図」があるからに違いない、と考えているとしたら、彼らのフラストレーションは相当なものだと想像できます。
これらの誤解の根本的な原因を一緒に探ってみましょう。欧米の企業とは違って、日系企業では「公式な情報」と「非公式な情報」の間に大きな隔たりがあります。未決定、あるいは変更される可能性がある事案は書面や電子メールで共有されることは少なく、不確定要素が多く含まれる内容の場合はなおさらです。書面化されたものはオフィシャルとみなされる恐れがあるため、コンセンサスが得られるまで意見交換は主に口頭で行われます。
海外の日系企業子会社では、非公式な議論は日本人スタッフの間のみで行われることが多いです。これらの議論や決定は会社で残業時、あるいは仕事の後の飲み会で行なわれることが多く、定時で帰宅する現地スタッフが議論や決定のプロセスに参加することを難しくしています。また、現地スタッフの多くは「オフィシャル」な情報のアップデートを待っているため、非公式な議論があることに気づくことができません。すべてが決定した後でのみ仲間に入れてもらえる…と彼らが感じるのは不思議ではないのです。
重要な経緯が含まれる情報が、仮に書面や電子メールで共有されたとしても、これらの情報は日本語のため現地スタッフが理解することはほぼ不可能です。「隠された意図」は公式そして非公式な情報共有の欠如とリンクしています。
管理職・非管理職含め、日本人従業員が誤解を回避する取り組みを実施しなくてはなりません。これが実現すれば、ビジネスへ影響を及ぼし、真にグローバルな企業となる次のステップとなるでしょう。
上記内容を含めた、日本人と現地スタッフの間の職場での様々な問題解決方法について、JCOの各種セミナーで詳しく説明しています。
JCOセミナーは下記にご紹介する公開セミナー、または各社様専用のインハウスセミナーの両方の形でご提供可能です。