日本政府は2019年4月1日より新・働き方改革を打ち出しましたが、それは日本の労働市場における働き方を世界で共有されているものに合致させ、より生産性を向上させるように方向づけるものとなっています。
その中の一つの目標は現在の過剰な労働時間を削減することです。実際、日本人の睡眠不足の水準は世界でも最も高く、それは日本の伝統的働き方では必要に応じて労働時間がいくらでも延長され得ることに関係していると思われます。
これに対してヨーロッパではワークライフバランスが重要視されており、どの会社でも時間の有効活用がスタッフの動機付けの主要素の一つとなっています。従って労働時間には限界があり、むやみに延長することはできません。この記事では、日系企業の現地法人で時間を節約して生産効率を上げるために考えられる方法について探ってみたいと思います。
「時は金なり」は誰も知っている名言です。その由来は15世紀のクロアチアの商人Cotrugliの「商人にとって時間を失うことは金を失うことに等しい」という言葉のようです。
このCotrugli の言葉から、「時間」は在庫、現金、資産そして備品や設備のような資産と同じように計測され管理される必要のあるものと見なされるべきだということ分かります。
これは、会社はこの時間という貴重な資源を常に完全に管理しているかという問いかけに繋がります。
管理職者が時間の使い方について経費などと同じようにあらかじめ承認しなければならないとしたらどうなるでしょう。それは、米国の一部の会社で見られるような、スタッフが一日のすべての作業を逐一記録してその作業の付加価値度を証明しようとする「マイクロ・マネジメント」をしなければいけないというのとは違います。
日本のビジネス環境における時間の管理として、職場でよくある以下のような状況にみられる時間の使い方についての費用対効果を考えるのはどうでしょう。
①日系欧州現地法人の毎週ある定例会議で、その会議の議題や共有されるデータに直接関与する出席者(日本人、現地社員に関わらず)は何人いますか ?
また、これらの直接の関係者たちは、メ-ルなどで事前に情報を既に得ていませんか?
日本国外で日系企業の会議の効率化を図る二つの簡単な方法があります。
a) 例えば、既に出席者全員に知られている情報の単なる報告が目的であるような会議を極力削減して、会議の数自体の削減を図るのはどうでしょう。現地職員の多くは、この種の会議は不必要であり非効率的だと感じています。
勿論、会議の場で何か重要な告知をする場合は例外ですが。
b) 参加予定者それぞれにとっての議題の妥当性を判断して出席者の人数を制限するのはどうでしょう。この際、ヨーロッパの専門性文化を判断基準にします。なぜなら、現地社員は自分が直接関与しない議題に対して責任を感じないし、また関心すらないからです。
米国での面白い例 : アマゾンのJeff Bezosは、会議において「2ピザル-ル」を謳っています。これは会議に参加する人数を2つの大型ピザを平らげる人数までに限定するというものです。
②日本の報連相スタイルで多くの社員がCCされるたくさんのメールのなかで、何通のメールが実際に現地社員に読まれる必要があるでしょう。
欧米のビジネス環境では、社員は自分に特定して送信された、読むべきものとして送られたメ-ルを受け取るものと考えています。
その為、彼らは全部ではないかも知れませんが受信したメ-ルの殆どを読むことになります。それは彼らには無関係のメ-ルを読まされたり、日本語だけで書かれたメ-ルを開いたりすることで時間を浪費することに繋がります。実際、時間は浪費され、同時に金が浪費されるのです。
「安全」を重視する日本の企業文化においては、直接もしくは間接的にでも関わっている社員すべてが全情報をいつでも利用できるようにするのが、CCメ-ルの目的であると言えます。そのため、それを体得している日本人スタッフは、ほとんどのCCメ-ルから最も自分に妥当なものを瞬時に選択してそれだけを読んでいるようです。
米国のマネ-ジャ-達を対象にしたもので、業務時間の28%がメール処理に消費されているという統計結果があります。ヨ-ロッパでもほぼ同水準ですが、メール処理に費やす時間は既に多すぎると考えられています。
外国人社員をCCするかしないか判断するコツには次のようなものがあります。
- あらかじめ受信者数の最大値を設定しておく。
欧米ではCCされるのは2-3人が普通で、6-7人を超えることは、非効率的で焦点が定まっていないとみなされる可能性があり、あまりありません。
送信者が誰に送信するか考えるのに使われる時間は、受信側で費やされる何倍もの時間の節約として回収される可能性があるということを意識してみてはいかがでしょう。現地社員が必要のないメールを開封しないことによって節約される時間は、彼らの専門の仕事の為に使われることになります。
「時は金なり」の考え方は、大きな利益を生み出す可能性に繋がります。
上述の例は日本のビジネス文化の必然的結果ともいえますが、日系企業が世界でさらに躍進できる組織になるためには、職場での時間の使い方を今一度見直す必要があるかも知れません。
このことは、他の名言によっても描写されています。「時 (そして好機)は人を待たず」で、人を待ってくれない時間は、勿論会社を待ってくれることもありません。
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