今回はドイツで最も有名な週刊誌から、興味深い広告をご紹介いたします。
政治・社会・文化関連に強いDer Spiegelという雑誌は、ネット上に「wenn sich alle einig sind, fangen wir an zu zweifeln」という大きなバナーを載せています。日本語に訳すと「皆が同意すると我々は疑い始める」ですが、いかにもドイツ人らしいスローガンではないでしょうか。なぜなら、ドイツでは新しいプロジェクトが提案されると、その場ですぐにディベートを始めるのが好ましいとされているからです。
一方で、弊社の日本人駐在員のお客様アンケートでは、以下のようなご意見が数多くみられました。「こちらのスタッフは、お喋り好きなのか、アピール好きなのか、何か提案をすると、とにかく必ずひとつは文句を言う。内容はどうでもいいことなのに・・・」
ドイツではどのような場合にもディベートは不可欠なことと見なされますが、日本人から見ると疲れるところがあるようです。
背景を説明しますと、ドイツ人は子供の頃から、ある指示・依頼・命令を実行する際は、その前に目的に賛成できるかを確認しなければならないよう育てられています。第三帝国時代、色々恐ろしい犯罪が犯されましたが、戦後皆は「命令に従っただけで無罪です」という言い訳を使い、責任を追うことをしませんでした。それを防ぐ為に、戦後の教育は「もっと自分の頭を使って考え、同意できない事は拒む市民を育てましょう」という方針で行われているからです。他のヨーロッパの国々でも、子供たちは「never do anything you don´t understand」と注意されますが、ドイツでは上記のような歴史的背景から、非常にこの点が重視されています。
駐在員の皆様は、ぜひ現地スタッフのこのような態度を歓迎してください。なぜならそれは、仕事に対して真剣に向き合い、強い責任感を持っている証しだからです。