質問:
飛行機の3列の真ん中の席が空いているとき、なぜ欧州人は真ん中の席を独占しようとするのか? 欧州内の飛行機はたいてい通路の右側と左側それぞれ3席ずつの配列になっています。3列の真ん中が空いていることが少なくありません。この場合、日本人は空いている真ん中の席に自分の書類やパソコンなどを置いて独り占めすることには抵抗を感じることが多いですが、欧州人はまったく気にせず物を置く人が多いと思います。欧州人は反対側に座っている人に配慮しようという気持ちは起きないのでしょうか?
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これは文化の違いが顕著に表れる面白い事例だと思います。一般的に欧米では日本に比べて個人主義的傾向が強く、周囲に配慮して行動するという習慣が日本ほど根強くありません。 飛行機の3列席の真ん中が空席だったら、反対側に座っている人に断りなく、これ幸いとばかりに二人の間の空席部分に自分の荷物を置こうとする人もいることでしょう。
こうゆうことができるのは、もし自分のこのような行動が反対側の人にとって仮に不都合なものであった場合、自分が躊躇せずに荷物を置いたのと同じくらい普通に、相手も躊躇せずに普通に何か言ってくるだろう、と思っているからです。躊躇せずにはっきりと自分の思っていることを伝えるという習慣は、いわゆる「低文脈文化」と呼ばれる文化圏の特徴で、このような文化圏では皆がお互いに自分が思っていることを伝え合うことに慣れており、しばしばそれを前提とした行動様式が見られます。
空席のスペースは、その両側に座っている二人のうち必要な人が使えばいいし、もし二人が使いたいのならば二人で使えばいい。とりあえず自分の荷物を置きたいから置くけど、反対側の相手も置きたければ置けばいい。もしそれにあたってこちらの荷物をずらす必要があるなら、相手はそうするように言ってくるだろう。もし相手が何も言わない、何も置こうとしてこないのであれば、この空席を使う必要も意思もないに違いない。真ん中に自分の荷物を置いた欧州人はこのような前提のもとに行動し、自分の行動がまさか相手にとって不快に感じられているかも知れない、とは微塵も思っていなかったことでしょう。
日本人の思うところとは反対であると言えます。個人主義的傾向があまりない日本では、周囲に配慮して行動するという習慣が根強くあり、日本人は幼少のときから、「周りに迷惑だからやめなさい」と親にそれこそ何千・何万回と言われて育ちます。また、欧米と違い「高文脈文化」と呼ばれる文化圏の日本では、自分たちの思っていることをお互いにはっきり伝え合うよりも、相手の気持ちを慮ってコミュニケーションを図ることを良しとします。2017年に「忖度」という言葉が流行語大賞になりましたが、相手が言わないことも聞き手のこちらが推し量って行動するのです。
このような「高文脈文化」圏では、往々にしてこちらが言わなくても相手に悟ってもらえるので、これに慣れてしまった人が、いちいち言わないと分かってもらえない、言わないと何もコトが運ばない「低文脈文化」圏で生活することになると、かなりの苦労があるようです。また、こちらが言わなかったことで「損」をするというような、いわゆる「言った者勝ち」的な状況に理不尽さを感じ、フラストレーションを溜めたり、憤りを感じたりする日本人も多いようです。
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