ヨーロッパのコミュニケーションは、相手の面目を保つことに配慮する日本の文化とは全く異なり、はっきりしたディスカッショ ンスタイルになります。ただドイツの場合は、他のヨーロッパの国々から見ても、極端にダイレクトでアグレッシブな言動をすると捉えられているようです。
我々ドイツ人も、「ドイツ人は議論好き」だと認めています。 (「ドイツ人の議論の概念」参照) 同 じ欧州でも、イギリス・スペイン・フランスなどでは、時と場合によって、曖昧な言い回しが用いられます。 例えばUKの駐在員は、イギリス人の真意に迷うことは、珍しくないと思います。ビジネスの場面で耳にする「your idea is certainly worth thinking about」は、多くの場合「検討させてください」と同義です。こういった言い回しは、イギリスが島国であるからかもしれません。
ですが、「clarity is more important than feelings/face」(面目を保つより明瞭さが大事)のドイツの文化では、子供の頃から納得のいかない事や相手の意見と異なる考えを、その場で筋 の通った様に主張するよう育てられています。簡単に言いますと、「口は禍のもと」というより「無口は禍のもと」という考え方が徹底されています。
因みに、ビジネス英語では、「Let me play Devil´s advocate」(あえて反対意見側にたったとしたら) という決まり文句もよく耳にします。他のヨーロッパの言語でも、同じようにさり気無い言い回しがありますが、面白いことにドイツ語にはありません。なぜか というと、正しい事だからはっきり発言する権利がある、という考え方が、ドイツでは非常に一般的だからです。これは、ドイツ語で「Ich habe Recht」(私は正しい)と「Ich habe das Recht zu…」(~する権利がある)の両方に使われているRechtという単語が語源的に同じ言葉である、というところからもうかがえます。
ドイツでは、当然周りも同じように議論をするので、こういった態度や言動は個人攻撃とはとられません。 逆に、仕事の場面では自分の意見が正しいという前提で話をしないと、仕事に自信のないか弱い人という印象を与えてしまいます。ドイツ人にとって、自己主張は自惚れではなく、同僚・上司・専門家として、相手に信頼されるための不可欠な行動です。
要するに、自分の提案・仕事は批判されても個人攻撃ではなく、あくまで会議・仕事の範疇です。
臆さず、自分の意見の正当性を伝えましょう!