質問:欧州人にとって名刺の重要性が低いのはなぜ?
日本人は、ビジネス上初めて面会するときには、着席する前にお互いに名前を名乗って名刺を交換するのが暗黙のビジネスマナーとなっています。ところが欧州人はお互いに名前を名乗って握手はしますが、すぐに名刺を交換することは少なく、少し時間が経って席に座った後などに名刺を配ったり、差し出したりすることが多いように思います。ときには初対面にもかかわらず「名刺を持ってこなかった」という人もいます。日本人にとって名刺は自分の「顔」に相当するくらい大事なものという扱いです。欧州人にとっては名刺の重要性は低いように感じます。この違いはどのように理解すればよいのでしょうか?日本人は名刺をもらっておかないと肩書きがよくわからなかったり、後々名前が思い出せなくなったり困ることも多いのです。
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ドイツ人、フランス人をはじめ欧州人の多くは、確かに日本人ほど名刺というものを重要視しておらず、名刺交換のタイミングや作法についてもあまりこだわらない傾向があります。思い出したときに「あっ、そう言えば」という感じでどこからかポーンと出してくる人もいるくらいです。
この違いがどこから来るかというと、相手との上下関係をもとに自分の所作をこと細かく調整する必要性をあまり感じていない、ということが根本にあると思います。欧州人でもお偉いさんに対して礼儀正しく振舞おうとすることは勿論ありますが、一般のビジネスの場においては、突き詰めるところ「人間対人間の関係」「自分は自分」などと感じており、相手が目上だろうが目下だろうが自分の振舞いや相手との接し方をあまり変えない人が多いです。そのため、名刺で相手の肩書きをいち早く確認して、相手との上下関係を測るということの重要性があまり高くないと言えます。
また、欧州人の中には、名刺にある肩書きよりも、相手の実際の職務内容やその責任範囲など、あくまで自分が仕事を進める上で鍵となる相手の情報を把握することが大事だと考えている人が多いようです。少なくとも初期の段階において、日本の習慣にのっとりながら人間関係を構築するよりも、自分の職務遂行を優先させようとする彼らの姿勢が垣間見られるところでもあります。